スキー場に行くと「今日は人工雪だから硬いな」「天然雪が降ったから滑りやすい」といった会話を耳にすることがあります。しかし、具体的に人工雪と天然雪で何がどう違うのか、しっかり理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、人工雪と天然雪の滑り心地の違いを詳しく解説し、それぞれの雪質に合った板やワックスの選び方についてもご紹介します。
人工雪と天然雪の作られ方の違い
まずは、人工雪と天然雪がどのように作られるのかを理解しておきましょう。
天然雪ができる仕組み

天然雪は、大気中の水蒸気が上空で冷やされ、氷の結晶として成長しながらゆっくりと地上に降ってきます。この過程で、雪の結晶は六角形の美しい形状を持つ複雑な構造になります。
降雪時の気温や湿度によって結晶の形が変わり、主に以下のような種類があります。
樹枝状結晶は、気温が低く湿度が高い時にできます。ふわふわのパウダースノーになりやすい結晶です。
板状結晶は、気温によって2つの温度帯で形成されます。0℃からマイナス3℃程度の比較的高めの気温と、マイナス10℃からマイナス22℃程度の低い気温の両方で発生します。雪の結晶研究で知られる「中谷ダイヤグラム」によると、その中間のマイナス3℃からマイナス10℃あたりでは柱状や針状の結晶ができやすいとされています。
針状結晶は、特定の温度帯でできる細長い形状の結晶です。
人工雪ができる仕組み

人工雪は、スノーマシン(造雪機)を使って人工的に作られます。主に2つの方式があります。
スノーガン方式は、水を高圧で空気中に噴射し、外気の寒さで凍らせる方式です。外気温が氷点下である必要があり、気温が低いほど効率よく雪を作れます。
アイスクラッシャー方式は、機械内部で氷を作り、それを砕いて雪状にする方式です。気温が高くても製造でき、室内ゲレンデなどで使われます。
どちらの方式でも、天然雪のように時間をかけて結晶が成長するわけではないため、雪の構造が根本的に異なります。
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雪の結晶構造が滑り心地に与える影響
人工雪と天然雪の最大の違いは、雪の結晶構造にあります。
天然雪の結晶は、六角形の複雑な形状をしています。結晶のサイズは小さく繊細で、空気を多く含んでいるためふわふわとした質感になります。そのため、硬さとしては柔らかいことが多いです。
人工雪の結晶は、球状または不規則な氷の粒で構成されています。結晶のサイズは比較的大きく、空気の含有量が少ないため密度が高くなります。結果として、硬い雪質になることが多いです。
天然雪は結晶同士が複雑に絡み合い、空気を多く含むためクッション性があります。一方、人工雪は氷の粒が詰まった状態になりやすく、硬くて密度が高い雪質になります。
この構造の違いが、滑り心地の差となって現れるのです。
人工雪の滑り心地の特徴
人工雪で滑る際に感じる特徴を詳しく見ていきましょう。
硬くてアイシーになりやすい
人工雪は密度が高いため、圧雪されるとさらに硬くなります。特に以下のような状況では、アイスバーンに近い状態になることがあります。
気温が上がって一度溶け、再凍結した場合は表面がツルツルになります。多くのスキーヤー・スノーボーダーに踏み固められた場合も同様です。また、朝一番や夕方以降の気温が下がる時間帯も注意が必要です。
エッジが効きやすいが、抜けると危険
硬い雪面はエッジがしっかりと食い込むため、カービングターンがしやすいというメリットがあります。しかし、一度エッジが抜けると一気にスリップしやすく、転倒時の衝撃も大きくなります。
コンディションによって板の走りが大きく変わる
人工雪の滑り心地は、雪の状態によって正反対の特徴を見せることがあります。
撒いたばかりの乾燥した人工雪の場合は、結晶がトゲトゲしてサンドペーパーのような状態になり、摩擦抵抗が大きくなります。特に気温が低い日は板が「つっかかる」ような感覚になることがあります。
一方で、踏み固められてアイシーになった人工雪の場合は、氷に近い状態になるため、天然雪よりも圧倒的に板が走ります。スピードが出すぎて怖いと感じるスキーヤー・スノーボーダーも多いです。
「人工雪だから走らない」と思い込んでいると、カチカチのバーンで予想以上にスピードが出て驚くこともあります。人工雪では、そのコンディションによって滑り方を変える意識が必要です。
足への負担が大きい
クッション性が少ないため、長時間滑っていると足首や膝への負担が大きくなります。初心者や久しぶりに滑る人は、疲労を感じやすいかもしれません。
天然雪の滑り心地の特徴
次に、天然雪で滑る際の特徴を見ていきましょう。
柔らかくクッション性がある
天然雪は空気を多く含んでいるため、滑走時にクッション性を感じられます。転倒しても衝撃が吸収されやすく、初心者にも優しい雪質といえます。
新雪のパウダースノーは浮遊感が楽しめる
降ったばかりの天然雪(パウダースノー)では、板が雪の中に沈み込みながら滑る独特の浮遊感を楽しめます。これは人工雪では味わえない天然雪ならではの醍醐味です。
雪質の変化が大きい
天然雪は気温や湿度、時間帯によって状態が大きく変わります。
朝一番は、圧雪されたばかりで滑りやすい状態です。日中は、気温上昇でシャバ雪(湿った雪)になることもあります。午後は、多くの人が滑った後は荒れやすくなります。
この変化に対応する技術が求められますが、それもまた天然雪の面白さです。
湿雪は板が走りにくい
気温が高い日や春先の天然雪は水分を多く含み、板にブレーキがかかるような感覚になります。いわゆる「ストップスノー」と呼ばれる状態で、ワックスの選択が重要になります。
人工雪と天然雪で板の選び方は変わる?
結論からいうと、人工雪か天然雪かで板を使い分ける人は少数派です。ただし、それぞれの雪質で有利になる板の特徴を知っておくと、より快適に滑れます。
人工雪(硬い雪)に向いている板の特徴
フレックスが硬めの板は、硬い雪面でも板がたわみすぎず安定します。
エッジのホールド力が高い板は、アイシーな斜面でもグリップしやすくなります。
サイドカーブがきつすぎない板は、急なターンで引っかかりにくいです。
硬めのカービング向けの板や、オールラウンドモデルの中でも硬めのフレックスのものが適しています。
天然雪(柔らかい雪)に向いている板の特徴
フレックスが柔らかめの板は、雪面に合わせてしなりやすいです。
ノーズが長め(ロッカー形状)の板は、パウダーで浮きやすくなります。
太めのウエスト幅の板は、深雪でも沈みにくいです。
パウダーボードや、ロッカーが入ったフリーライド系の板が活躍します。
実際の対処法
多くのスキーヤー・スノーボーダーは、1本の板でさまざまな雪質に対応しています。その場合は、ワックスや滑り方で調整するのが現実的です。
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雪質に合わせたワックスの選び方
板を変えるのは難しくても、ワックスを変えることで雪質への対応力は大きく向上します。
ワックスの基本:雪温に合わせて選ぶ
ワックスには適応温度帯があり、雪の温度(≒気温)に合わせて選ぶのが基本です。
低温用ワックス(青・緑系)は、雪温が-10℃以下の環境に適しています。硬い雪面向けで、摩擦を抑える効果があります。
中温用ワックス(紫系)は、雪温が-10℃から-3℃程度の環境に適しています。オールラウンドに使えるタイプです。
高温用ワックス(赤・黄系)は、雪温が-3℃以上の環境に適しています。湿った雪向けで、撥水性が高いのが特徴です。
フッ素入りワックスの現状について
従来、フッ素入りワックスは撥水性が高く滑走性能に優れるとされてきました。しかし現在、環境規制(PFOA規制など)により、フッ素入りワックスの製造・販売は世界的に禁止・制限される流れになっています。
FIS(国際スキー連盟)の公式大会では既にフッ素入りワックスの使用が禁止されており、一般市場でも「フッ素フリー(Non-Fluoro)」の高性能ワックスへ急速に置き換わっています。
これからワックスを揃える場合は、フッ素フリーのワックスを選ぶことをおすすめします。各メーカーがフッ素を使わずに高い滑走性能を実現した製品を開発しており、環境への配慮と性能を両立できるようになっています。
フッ素フリーのワックス
人工雪に適したワックス
人工雪は硬くて摩擦が大きいため、低温用のワックスが効果的です。また、硬い雪面でソールが摩耗しやすいので、滑走面を保護する効果があるベースワックスをしっかり塗っておくことも重要です。
天然雪(湿雪)に適したワックス
春先の湿った天然雪では、高温用の撥水性が高いワックスを選びましょう。水分を弾くことで、板が雪に吸い付くような「ストップスノー」状態を軽減できます。
フッ素フリーワックスでも、高温用に設計された製品は十分な撥水性を持っています。滑走頻度と予算に応じて選ぶとよいでしょう。
人工雪メインのスキー場で快適に滑るコツ
人工雪が多いスキー場でも、工夫次第で快適に滑ることができます。
エッジの手入れをしっかりと
硬い雪面ではエッジの効きが重要です。シーズン中に何度かエッジのチューンナップをすることで、アイシーなバーンでもしっかりグリップできます。
滑るコースや時間帯を選ぶ
朝一番は、圧雪直後で比較的滑りやすい時間帯です。日当たりの良い斜面は、昼間は少し緩んで滑りやすくなることもあります。一方で林間コースは、日陰で硬いままのことが多いので注意が必要です。
膝を柔らかく使う
硬い雪面では衝撃がダイレクトに伝わります。膝をクッションのように柔らかく使い、衝撃を吸収するよう意識しましょう。
スピードの出しすぎに注意する
踏み固められた人工雪はアイシーになり、予想以上にスピードが出ることがあります。特に緩斜面でも油断せず、常にスピードコントロールを意識しましょう。
転倒時に備える
人工雪での転倒は衝撃が大きいため、プロテクターやヘルメットの着用をおすすめします。特にプロテクターは、硬い雪面での転倒から身を守ってくれます。
プロテクター(メンズ・レディース兼用)
まとめ
人工雪と天然雪の滑り心地の違いについて解説しました。
人工雪の特徴
人工雪は硬くて密度が高い雪質です。エッジは効きやすいですが、抜けると危険なためコントロールに注意が必要です。
コンディションによって滑り心地が大きく変わる点も特徴的です。撒いたばかりの乾燥した状態では摩擦が大きく走りにくいですが、踏み固められてアイシーになると逆にスピードが出すぎることがあります。
足への負担も大きくなりがちなので、プロテクターの着用や適度な休憩を心がけましょう。
天然雪の特徴
天然雪は柔らかくクッション性があります。パウダースノーでは浮遊感を楽しめるのが魅力です。ただし、時間帯や気温で雪質が変化しやすく、湿雪になると板が走りにくくなります。
快適に滑るためのポイント
板を雪質で使い分けるのは現実的ではありませんが、ワックスを雪温に合わせて選ぶことで滑走性は大きく改善できます。ワックスを選ぶ際は、環境規制を踏まえてフッ素フリーの製品を選ぶとよいでしょう。
また、エッジの手入れや滑る時間帯の工夫、コンディションに応じたスピードコントロールで、人工雪メインのスキー場でも快適に滑れるようになります。
雪質の違いを理解して対応できるようになれば、どんなコンディションでもスキー・スノーボードを楽しめるはずです。今シーズン、ぜひ意識して滑ってみてください。
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